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2026/2/24修理についてのアンケート結果 その2

前回は、2,000人のアンケート結果をもとに日本における修理の現状をお伝えしました。修理の必要性は多くの人が認識しているものの、「どこで修理できるかわからない」「高そう」という情報・コスト面の障壁が、修理という選択肢を遠ざけている実態が浮かび上がりました。
では、そうした状況の中で積極的に修理を活用している人たちは、どんな層なのでしょうか。今回は「修理ヘビーユーザー」に焦点を当てます。
修理ヘビーユーザーとは
今回の調査では、過去2〜3年に日用品修理店を複数回利用し、合計でおよそ2万円以上を費やした人を「修理ヘビーユーザー」と定義しました。修理経験者の約16%に相当します。2万円という金額は、衣類のファスナー交換や裾上げを複数回、あるいは高価なバッグや電化製品の修理なら1〜2回でほぼ達する水準です。特別な出費というよりも、日常的な選択の積み重ねといえるでしょう。
ヘビーユーザーの特徴
最も多いのは30代(27%)で、調査全体の割合(15%)の1.8倍にあたります。40代(21%)と合わせると、30〜40代でヘビーユーザー全体の約半数を占めます。
その他の特徴を調査全体と比較すると、次のような傾向が見えてきます。
- 子どもがいる:56%(全体平均45%)
- フリマアプリで売買両方を経験:60%(全体平均29%)
- 世帯年収1,000万円以上:30%(全体13%の2.3倍)
- 東京都内在住:30%(全体17%の1.8倍)
子育て世帯や所得水準の高い層、都市部の居住者、そしてフリマアプリで「モノの価値を見極める」習慣を持つ人に、修理の積極的な利用者が多い傾向があります。
修理する理由の違い

さらに注目したいのは、修理を選ぶ動機の違いです。調査全体では「まだ使えるから」という実用的・経済的な理由が最も多かったのに対し、ヘビーユーザーでは「愛着や思い入れがあるから」という感情的な理由が上位に挙がりました。
ヘビーユーザーにとって修理の対象は、単なる日用品ではなく手放したくない大切なものです。だからこそ、多少費用がかかっても修理を選ぶ——そうした「愛着への投資」という動機が、高単価・高頻度の利用につながっていると考えられます。
不満・不安の違い

修理に関する不満や不安にも、両者で異なる傾向が見られました。調査全体では料金やアクセスの悪さを挙げる人が多い一方、ヘビーユーザーは「大切なものを自分では直せない」ことへの不満が目立ちます。ただし、料金や修理可能な範囲の見通しが立てにくい点は、両者に共通する課題です。
修理市場の可能性
前回お伝えしたとおり、修理を利用している人は全体の約20%にとどまります。情報やアクセスの壁がある限り、ニーズがあっても修理は選択肢に入りにくい状況が続くでしょう。
一方で、ヘビーユーザーの行動が示すのは、修理が日常の延長線上にあるという事実です。壁さえ取り除けば、修理はより多くの人に自然に選ばれる選択肢になり得ます。
調査結果が示す課題は2つです。まだ修理を使っていない人には、認知・アクセス・価格の透明性という障壁を下げること。すでに修理に積極的な層には、愛着あるものをより深く・長く直せる体験を提供すること——これが市場の単価と頻度を高める鍵になるでしょう。
愛着あるものを長く使う文化が再評価される時代は、すでに始まっています。日本の修理市場にはまだ大きな成長の余地があります。
【調査概要】
調査対象:20代〜70代以上の男女
サンプル数:2,000人(各年代300〜400人)
調査方法:オンライン調査
調査期間:2026年10月~11月 -
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2026/2/12修理についてのアンケート結果 その1

前回は、国内で日用品の修理が進んでいない現状についてお伝えしました。今回はA lutenが行った修理についてのアンケートの結果についてお伝えします。
本調査は、20代から70代以上までの合計2,000人、各年代から概ね300〜400人を対象にオンラインで実施しました。調査によると、過去2〜3年の間に修理経験がある人は全体の約2割に留まり、必要性を感じながらも修理を行っていない人も約2割、そして修理を必要だと感じたことのない人が約6割という結果でした。
年代別に見ると、修理経験は年代とともに高まる傾向が示されています。
アンケートでは修理が必要な時、相談先が思い当たるアイテムについて尋ねました。
すると回答者のうち43%が、日用品の修理店を1つも知らないと答えました。
家電やスマートフォン・PC修理:それぞれ約32%(最も高い)
衣服、時計・アクセサリー:それぞれ約23%
家具、マットレス:それぞれ約6%認知度が最も高いスマホ・PC修理でさえ3割程度。家具やマットレスに至っては、どこで修理できるか知っている人はほとんどいません。

調査では、年齢が上がるほど修理経験があり、修理店の場所も知っているという傾向が見られました。
- 20代:約60%が「どの修理店も知らない」と回答
- 30代〜60代:徐々に「どこも知らない」割合が減少
- 70代以上:半数以上が家電やスマホの修理先を把握。「どこも知らない」という回答は少数派に
若い世代ほど、修理という選択肢が視界に入っていない状況がわかります。
次に修理の不満について調査したところ、明確な課題が浮き彫りになりました。
最も不満が強かったのは「料金が高い・高そう」で、64.5%が共感を示し、他の項目を大きく引き離しました。次点では「どこまで直せるかわからない」「お店が近くにない/探すのが面倒」が上位に並びました。
この順位は修理経験のありなしに関わらずほとんど一緒でしたが、修理経験者は実感を伴って、不満に共感する人の割合が全体に高くなりました。
一方、「直す必要性を感じない」という項目は最も不満が少なく、多くの人が修理の必要性自体は認識していることがわかりました。
次回は、実際に修理を積極的に活用している人たちに注目します。
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2026/1/29修理についてのアンケート調査を実施しました

一般社団法人A lutenは、「資源循環の媒介役」として、人と人、モノとモノをつなぐ活動をしています。このたび、資源循環を実現するために「修理(リペア)」に焦点を当てた約2,000人規模の調査を実施しました。なぜ修理に注目したのか、まずその背景についてお話しします。
実はリサイクルに偏っている日本の3R
日本では1990年代から「リデュース」「リユース」「リサイクル」の3R概念が広まり、循環型社会づくりが進められてきました。環境省は環境負荷の低い順に「リデュース」「リユース」(修理はここに含まれます)を優先すべきとしていますが、実際は環境負荷の高い「リサイクル」に重きが置かれているのが現状です。

近年注目されている「サーキュラーエコノミー(循環経済)」は、従来の「作る→使う→捨てる」という一方通行ではなく、資源や製品の価値をできるだけ長く保つ新しい経済システムです。ここで特に重要なのが、リデュースに続き、製品を長く使い続けるリユースなのです。
実は浸透していない「修理」という選択肢
フリマアプリの登場やリユースショップの増加により、日本のリユース市場は拡大傾向にあります。しかし、「修理」という選択肢はまだまだ浸透していません。
総務省家計調査のデータを見ると、修理関連の年間支出の80%以上が住宅や自動車などの大型修理に使われており、文具、バッグ、玩具といった生活用品の修理はわずか2%にとどまっています。
住宅や車については修理を日常的に行っていても、身の回りのモノを「修理する」という発想が、まだ一般的ではないのです。
なぜモノの修理は広まらないのか?
修理が普及しない理由は複雑です。現代社会では安くて手軽に買い替えられる環境が当たり前になり、モノを修理して長く使う習慣が根付いていません。利用者側からは、「修理より買い替えの方が安くて早い」「どこで修理できるのかわからない」「修理店に持っていくのが面倒」といった声が聞かれます。
こうした様々な課題が重なって、修理の文化が十分に形成されていないのが実情です。私たちA lutenは、「壊れたら捨てる」から「直して長く使う」文化への転換を目指し、修理のニーズやハードルを把握する調査を実施しました。
修理の必要性を感じた人は少数派
本調査は、20代から70代以上までを対象に合計2,000人、各年代から概ね300〜400人程度の回答を得ました。
調査の結果、過去2〜3年の間に修理経験がある人は全体の約2割に留まり、続く約2割は必要性を感じながらも修理を行っていないことが判明しました。残りの6割は修理を行ったことも、必要性を感じたこともなかったのです。

次回は、この調査結果の続きをご紹介します。
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2025/8/19✴︎ News&blog【お知らせ】9/3環境省「脱炭素型循環経済システム構築促進事業」プロジェクト報告シンポジウムが開催されます

9/3(水)に環境省「脱炭素型循環経済システム構築促進事業」プロジェクト報告シンポジウム-「品質」と「デザイン」が家庭系廃プラ・リサイクルの明日をつくる-が開催されます。
九州大学が中心となり提案した「リサイクル困難素材等の高品質リサイクル実証事業」が、環境省の「脱炭素型循環経済システム構築促進事業(うち、プラスチック等資源循環システム構築実証事業)」に採択され、令和5年度から7年度にかけて実施しています。
本事業では、廃棄プラスチックの効率的な回収体制を構築し、リサイクル材の高品質化及びデザイン性が高い商品を開発することで資源循環型社会への貢献を目指します。
A luten も本事業に関わっており、当日は代表の菊澤が司会を担当いたします。
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環境省「脱炭素型循環経済システム構築促進事業」プロジェクト報告シンポジウム
-「品質」と「デザイン」が家庭系廃プラ・リサイクルの明日をつくる開催日時:2025年(令和7年)9月3日(水)
会場:九州大学大橋キャンパス デザインコモン2F+オンライン
プログラム・詳細はこちら
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2025/5/1『都市政策研究』第26号に掲載|福岡市×中小企業の脱炭素化レポート

[脱炭素の取り組み内容に関するアンケート結果]
脱炭素施策に関する研究報告が、公益財団法人福岡アジア都市研究所の紀要『都市政策研究』第26号(2025年3月発行)に掲載されました。市内中小企業の現場調査に基づき、脱炭素への現状と課題を整理した内容となっています。代表の菊澤は「中小企業の脱炭素の取り組み ― 現状と課題 ―」と題して、脱炭素社会の推進に向けた地域企業の役割と支援策について考察しました。
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掲載論文情報
論文タイトル:中小企業の脱炭素の取り組み ― 現状と課題 ―掲載誌:公益財団法人福岡アジア都市研究所『都市政策研究』第26号
発行日:2025年(令和7年)3月
ーーーーーーーーーーーー【論文要旨】
GX(グリーントランスフォーメーション)は、国の新たな政策の柱として位置づけられ、新産業創出の契機とされています。しかし、福岡市およびその近隣地域の中小企業の多くは、GXが推し進める技術革新や脱炭素が自社に直接関係するものとは認識しておらず、省エネ設備の導入も主に固定費削減の手段として捉えられているのが実情です。
本研究では、中小企業の脱炭素化における現状と課題を明らかにするため、既存のアンケートおよびインタビュー調査に加え、独自に実施した調査を通じて、気候変動による影響の程度、脱炭素以外に抱える経営課題、脱炭素化への意識と実施状況、取り組みの動機、さらに推進を妨げる障壁について多角的に分析しました。これにより、脱炭素化の停滞要因や中小企業特有の意識・行動の特徴を掘り下げ、今後の支援策や施策立案への示唆を得ることを目指しています。福岡市の未来を見据えた「脱炭素への挑戦」に関心のある方は、ぜひご一読ください。
詳細は福岡アジア都市研究所の公式サイトにてご確認いただけます。
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2025/4/30【受賞報告】ウェルビーイング(新たな都市の評価に関する研究Ⅱ)が「都市調査研究グランプリ」奨励賞を受賞

論文「ウェルビーイング(新たな都市の評価に関する研究Ⅱ)」が、公益財団法人 日本都市センター主催の「第15回都市調査研究グランプリ(CR-1グランプリ)」にて、政策応用部門 奨励賞を受賞しました。本研究は、都市における“幸福”のあり方を問い直し、自治体がウェルビーイングを政策にどう組み込むかを体系的に分析したものです。論文は福岡アジア都市研究所( URC)の山田研究主査とともに、一般社団法人A lutenの代表菊澤による共著です。
受賞に際し、日頃よりご支援いただいている皆さまへ感謝を申し上げるとともに、今後の研究・実践に一層邁進してまいります。
[授賞式の様子┃日本都市センター CR1グランプリ 奨励賞受賞 | 福岡アジア都市研究所(URC) ]
都市調査研究グランプリとは
全国の都市自治体や職員が主体となって行った優れた調査研究を表彰する制度であり、都市の行財政運営に資する実践的な知見を広く共有することを目的としています。
研究内容と評価ポイント
本研究では、ウェルビーイングという主観的な概念を都市政策へ導入する方法について検討を行いました。具体的には、ロジックモデルに基づき、ウェルビーイングの政策形成を助ける「政策的フレームワーク」を構築し、最終的なゴール(インパクト)の設定から、ゴールの実現に強く影響を及ぼすアウトカムの設定、具体的な施策の立案・実施までの流れを理論的に導出しました。
また、2023年に URCにて実施したアンケート分析において、仕事を中心とする日常の主な活動の充実が人々のウェルビーイングに強く影響を与えていることを明らかにしました。
審査講評では、以下のような点が高く評価されました:
- ウェルビーイングに関する概念整理と先行研究の精緻な検討
- 自治体の基本計画への応用に向けた具体的な視点の提示
- 政策的フレームワークの構築と他自治体への汎用性
都市の多様な課題に対して、“人の幸福”を軸にどう応えていけるか。研究と現場をつなぐかたちで、いただいた成果を自治体や企業など多様なパートナーと共有し、より良い都市づくりに生かしていけるよう、今後も取り組みを続けてまいります。
第15回都市調査研究グランプリ(CR-1グランプリ)表彰式 | 公益財団法人日本都市センター
報告書のダウンロードはこちら:https://urc.or.jp/report/publications/2023sougou-wb/
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ごみ焼却施設「佐賀東部クリーンエコランド」の見学

2024年3月竣工のごみ焼却施設「佐賀東部クリーンエコランド」 *1 を見学しました。この施設は、環境保全や施設の耐久性・安全性の向上を基本方針としており、浸水対策や環境教育・啓発にも力を入れています。施設の動線や担当者の説明から、教育的要素に配慮していることを感じました。
施設内の見学動線は広く、わかりやすい動画などによる説明が随所に設けられています。施設の各部門、例えば、ごみ清掃車がごみを投入する入り口や、ごみをためる「ピット」、ごみが焼却される場所(ここはイメージ動画のみで実際に見ることはできません)などが見学できます。
今回特に関心を持ったのは、ごみの組成による燃えやすさや燃えにくさの違いや、組成の変化がどのように焼却に影響するのか、という点です。
「ごみは減らさなくても良い、燃やせば灰しか残らないから問題ない」、「特にプラスチックは燃えやすいので、分別せずに焼却してしまえば良い」という意見も見受けられます。これらは焼却を前提とした議論の中で出てくる意見であり、ごみの分別や減量を進める立場からすると、なかなか納得できない部分もあります。
実際にごみの組成と焼却の関係性について詳しく尋ねたところ、現在のごみの組成(紙類が40%、プラスチックが30%、生ごみが20%、その他が10%)を考えると、基本的にはごみは自燃し続けるそうです。焼却処理施設の設計時には、発電効率やごみ組成の幅、さらには災害ごみの受け入れなどを考慮して高い処理能力が確保されており、例えば、プラスチックのごみがゼロになるような劇的な変化がなければ問題が発生することはないとのことでした。
しかし、焼却処理施設の寿命と考えられている30年の間に自治体のごみ政策が大きく変わる可能性も考えられます。例えば、生ごみが減ってプラスチックなどカロリーの高いもの(燃えやすいもの)ばかりになると、炉内の温度が高くなりすぎるため、ごみの投入量を減らしたり、一時的に水を散水して温度を下げたり、カロリーの低い(燃えにくい)ごみと一緒に投入したりする必要が出てくるそうです。逆に、プラスチックの分別が進み、生ごみばかりになると、助燃剤の使用が必要となる可能性があり、その場合、燃料の投入費用が増加し、CO2排出量も増えることになります。
大きな処理能力の施設を建ててしまうと、ごみを常に一定量投入する必要があるため、稼働から20-30年間のごみの量の変動を予測しないといけません。高い処理能力が確保されていると、それに見合った運用が必要であり、ごみ減量の動機が薄れる恐れがあります。

[ごみピット・ごみクレーン(定期的にこちらからあちらへ、あちらからこちらへごみをひとつかみずつ移動させることでカロリー(燃えやすさ)を均一にします)]
ごみ管理は、国民の基本的な衛生と生活環境維持の基盤となる欠かせない要素です。処理能力が過剰にならないように調整する一方で、ごみの適切な処理が滞ることなく、30年後のごみ組成やCO2排出量を見据えた施設設計を行うことの難しさを体感しました。
そのほかにも、アップサイクル*2製品の展示等、持続可能な資源循環のあり方についても考えさせられる見学となりました。ごみの処理は単なる焼却ではなく、地域の環境や経済にも関わる重要な課題です。今後も、ごみと向き合い、ごみについて語りつつ、より良い社会の実現に向けて考えてまいります。
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*1佐賀東部クリーンエコランド: 佐賀県東部環境施設組合が運営するごみ焼却施設、鳥栖市・神埼市・吉野ヶ里町・上峰町・みやき町のごみを受け入れる。
*2アップサイクル:本来は捨てられるはずの製品に新たな価値を与えて再生すること
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2025/1/30内閣府向け講演報告「ウェルビーイングの政策への適用プロセス」

内閣府職員に向けた研修にて、ウェルビーイング(WB)*1に関する講演を行いました。内閣府では、長年、国民の価値観や生活意識の変化を捉えるため、「満足度」や「生活の質」に関する調査を実施しており、内閣府経済社会総合研究所においてもWBの研究が行われています。今回の依頼は、「WBの政策への適用プロセス」をテーマに、主観的な評価項目や政策的フレームワーク*2について、詳しく話して欲しいというものでした。
講演内容については別の機会で取り上げるとして、質疑応答では、特に地方でWBの取り組みが盛んな印象を持つとの指摘がありました。特定の都市だけを取り上げても、所得やWBスコア、性別、年代別で多様な傾向が見られ、こうした細かな違いを捉えるには大規模なデータでは難しく、地域ごとの特徴に焦点を当てた分析が重要です。地方自治体は、こうした地域ごとのニーズや価値観を丁寧に捉え、それに応じた政策を実施することで、WBを効果的に向上させることができると考えられます。
講演では、イングルハートの世界価値観調査を用いて、農耕社会のように社会的流動性が低い地域や宗教色の強い国よりも、近代化が進む国の方が幸福度が高いことを報告しました。しかし、それに対し、「農耕社会に見られる共同体の支え合いもウェルビーイング(WB)に影響を与えるのではないか」との指摘がありました。これまで、価値観は宗教的価値から合理的価値へ、さらに個人の自由を重視する民主的価値へと変遷してきましたが、今後も変化が続くと考えられます。その中で、伝統的な価値観や社会的つながりへの回帰が幸福に与える影響が強くなる可能性もあります。近年、欧米で重視されてきた個人主義的なウェルビーイングに対し、アジアなどで注目される「他者とのつながりの中で見出されるウェルビーイング」が関心を集めていることも、こうした変化の一端と捉えられるかもしれません。
さらに、アマルティア・セン*4の潜在能力アプローチの評価方法についても質問がありました。このアプローチは、物質的な豊かさや量的指標にとどまらず、個人がどれだけ自分の可能性を発揮できるかに焦点を当てるものです。予算や人員(インプット)が必ずしも同じ結果(アウトプット)をもたらすわけではなく、インプットを、期待されるアウトプットやアウトカムに転換する「潜在能力」に配慮することが重要となります。こうしたアプローチの評価についてはまだ未開拓な部分が多いのですが、1つの可能性として、これまでの定量的な(数字で表される)評価に加え、定性的(ナラティブと呼ばれる)評価の重要性も増してくると考えています。
最後に、WBは、地域ごとの特色を踏まえた支援が必要であり、地方自治体が地域のニーズに応じた施策を講じ、国はそのサポートを行うという国と地方の役割分担についても意見をいただきました。
今回、WBの実現には地域ごとのニーズに応じた柔軟なアプローチが必要であり、伝統的な価値観や社会的つながりの重要性を再認識しました。また、従来の定型的な政策形成から、センの潜在能力アプローチのような状況に応じた施策の形成プロセスを含めた研究や取り組みが引き続き不可欠であると強く感じています。
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*1ウェルビーイング(WB):「肉体的にも精神的にも、そして社会的にも、すべてが満たされた状態」かつ継続性のある幸福
*2政策的フレームワーク:政策や事業において、目的、成果、活動、リソースを論理的に整理し、因果関係を明確にするために用いられるロジックフレームを元に開発されたウェルビーイングを政策に適用する際のフレームワーク
*3EBPM:エビデンス・ベースト・ポリシー・メイキング。証拠に基づく政策立案。
*4アマルティア・セン:インド出身の経済学者で、福祉経済学や貧困、飢餓、不平等の研究で知られ「潜在能力アプローチ」を提唱した人物。2000年にノーベル経済学賞を受賞。
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2024/9/4✴︎ News&blogお知らせ:コーポレート ロゴが完成しました

A luten は8月、設立1周年を迎えました。新しいロゴは今まで大切にしてきた価値観を軸に、今後の指針となるよう制作しました。
ロゴタイプ
生活者にとって環境問題というのは無視できない存在であるものの、重く大きすぎるがゆえにどこか遠くのできごとのように感じてしまいます。
A lutenは無理のない仕組みづくりで関わる人に気づきを与えたり、共に想像したり、仕組みの一部として何かと何かを繋ぐような事業のあり方を目指したいと考えています。楽しさやユーモアをまじえ、あれ?と発想転換させたり、面白そう!と新しい視点を与えたり。わくわくするにつなげていく仲介者、媒介者として活動したい。
そんな思いを込め、親しみを感じる軽やかなタッチのロゴタイプを採用しました。
ロゴマーク
A luten の新しいトレードマークとしてカリブーを選びました。菊澤の環境活動のターニングポイントとしてカナダの亜北極地域の先住⺠族の研究があります。彼らが最も敬意を示すのがCaribou(カリブー=北米のトナカイ)です。
何千年にもわたって先住民族や動物たちの食料となってきたカリブーですが、狩猟や開発など生息地の悪化によって絶滅危惧種に指定されています。このロゴには持続可能な未来を築くという意味も込められています。
新しいロゴを通してA lutenのスタンスと想いを伝え、環境に関わるさまざまなプロジェクトに貢献していきます。
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2024/04/01✴︎ News&blogお知らせ:代表の菊澤育代が(公財)福岡アジア都市研究所フェローを拝命

弊社代表の菊澤が、(公財)福岡アジア都市研究所にてフェローに任命されました。
福岡アジア都市研究所は、福岡市や市民、産業界、学界などの連携のもと、都市政策を研究、将来の都市戦略を提言する研究機関です。
研究者として外国人と防災、情報技術と資源循環、ウェルビーイングなど自治体が抱える多様な課題に携わってきたことが評価されたのであればうれしく思います。福岡市の政策シンクタンクとして様々な研究を発信する福岡アジア都市研究所に、少しでも貢献できるよう努めてまいります。
