ごみ焼却施設「佐賀東部クリーンエコランド」の見学

2024年3月竣工のごみ焼却施設「佐賀東部クリーンエコランド」 *1 を見学しました。この施設は、環境保全や施設の耐久性・安全性の向上を基本方針としており、浸水対策や環境教育・啓発にも力を入れています。施設の動線や担当者の説明から、教育的要素に配慮していることを感じました。
施設内の見学動線は広く、わかりやすい動画などによる説明が随所に設けられています。施設の各部門、例えば、ごみ清掃車がごみを投入する入り口や、ごみをためる「ピット」、ごみが焼却される場所(ここはイメージ動画のみで実際に見ることはできません)などが見学できます。
今回特に関心を持ったのは、ごみの組成による燃えやすさや燃えにくさの違いや、組成の変化がどのように焼却に影響するのか、という点です。
「ごみは減らさなくても良い、燃やせば灰しか残らないから問題ない」、「特にプラスチックは燃えやすいので、分別せずに焼却してしまえば良い」という意見も見受けられます。これらは焼却を前提とした議論の中で出てくる意見であり、ごみの分別や減量を進める立場からすると、なかなか納得できない部分もあります。
実際にごみの組成と焼却の関係性について詳しく尋ねたところ、現在のごみの組成(紙類が40%、プラスチックが30%、生ごみが20%、その他が10%)を考えると、基本的にはごみは自燃し続けるそうです。焼却処理施設の設計時には、発電効率やごみ組成の幅、さらには災害ごみの受け入れなどを考慮して高い処理能力が確保されており、例えば、プラスチックのごみがゼロになるような劇的な変化がなければ問題が発生することはないとのことでした。
しかし、焼却処理施設の寿命と考えられている30年の間に自治体のごみ政策が大きく変わる可能性も考えられます。例えば、生ごみが減ってプラスチックなどカロリーの高いもの(燃えやすいもの)ばかりになると、炉内の温度が高くなりすぎるため、ごみの投入量を減らしたり、一時的に水を散水して温度を下げたり、カロリーの低い(燃えにくい)ごみと一緒に投入したりする必要が出てくるそうです。逆に、プラスチックの分別が進み、生ごみばかりになると、助燃剤の使用が必要となる可能性があり、その場合、燃料の投入費用が増加し、CO2排出量も増えることになります。
大きな処理能力の施設を建ててしまうと、ごみを常に一定量投入する必要があるため、稼働から20-30年間のごみの量の変動を予測しないといけません。高い処理能力が確保されていると、それに見合った運用が必要であり、ごみ減量の動機が薄れる恐れがあります。
[ごみピット・ごみクレーン(定期的にこちらからあちらへ、あちらからこちらへごみをひとつかみずつ移動させることでカロリー(燃えやすさ)を均一にします)]
ごみ管理は、国民の基本的な衛生と生活環境維持の基盤となる欠かせない要素です。処理能力が過剰にならないように調整する一方で、ごみの適切な処理が滞ることなく、30年後のごみ組成やCO2排出量を見据えた施設設計を行うことの難しさを体感しました。
そのほかにも、アップサイクル*2製品の展示等、持続可能な資源循環のあり方についても考えさせられる見学となりました。ごみの処理は単なる焼却ではなく、地域の環境や経済にも関わる重要な課題です。今後も、ごみと向き合い、ごみについて語りつつ、より良い社会の実現に向けて考えてまいります。
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*1佐賀東部クリーンエコランド: 佐賀県東部環境施設組合が運営するごみ焼却施設、鳥栖市・神埼市・吉野ヶ里町・上峰町・みやき町のごみを受け入れる。
*2アップサイクル:本来は捨てられるはずの製品に新たな価値を与えて再生すること
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