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Circular Economy

サーキュラーエコノミーとは、従来の「作り、使い、捨てる(Take-Make-Waste)」という線形の経済モデルとは異なり、有限な資源の投入を減らし、一旦投入された資源は最大限に活かし、廃棄物を最小限に抑える持続可能な循環型の経済モデルです。循環の輪を、狭める、ゆっくりにする、閉じる、再生する、知らせるという方法で、製品の設計から、製造、商品・サービスの提供、消費、廃棄までのプロセスの最適化を進めます。

サーキュラーエコノミーは新たなビジネスモデルやイノベーションの機会を生み出し、新たな雇用機会を提供する可能性を秘めています。廃棄物を資源として再利用することで、資源効率の高い、すなわち経済効率の高い新たな産業やサービスが生まれ、経済の多様性と持続可能性が高まることが期待されています。
サーキュラーエコノミーが実現されると、人々の社会経済活動は、モノやサービスの循環の中にすっぽりと取り込まれます。これにより、持続的な地球と人々のウェルビーイングがもたらされることが期待されます。

Source: Ellen MacArthur Foundation, Circular economy systems diagram (Feb2019) をもとに作成

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    2025/1/15
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    大刀洗の取り組みから学ぶ、リサイクルがつなぐ地域の輪

    リサイクルボックスの底には、リサイクルありがとうの絵

    先月、福岡県大刀洗町(たちあらいまち)にある「MEGURU STATION」を訪問しました。「MEGURU STATION」は「互助共助を生むコミュニティ拠点」と「資源回収ステーション」の2つの機能を融合させたリサイクルステーションです。アミタホールディングス株式会社が提案し、地域課題の統合的な解決を目的としています。ただの資源回収拠点ではなく、住民が主体となって運営し、リサイクルを通じて地域コミュニティを活性化させることが目指されます。

     

    ごみの分別
    [住民が運営するゴミステーション]

    実は、今回の訪問は3回目でした。1回目の訪問時は、第1号拠点が実証段階にあり、リサイクルステーションの運営を住民主体で行うというコンセプトが住民にどのように受け入れられるのか未知数の状況でした。袋がいっぱいになると利用者が新しい袋と取り替え、バックヤードに持っていくという作業を行います。多少の手間はあるものの、このステーションがないと1ヶ月に1回の資源の日まで家に保管しておかないといけなかったそうなので、そういう意味で利便性が上がっているというのも、受け入れられているポイントです。

    住民が運営するゴミステーションの写真
    [住民が袋を交換する]

    その後、2回目の訪問時には校区別に拠点が4つに増え、それぞれの地域に合わせた特色ある取り組みを見ることができました。
    たとえば、本郷校区の「ふれあいセンター」では、生ごみをバイオガス化処理してガスや液肥を作り、液肥は敷地内にあるコミュニティガーデンで使われ、育った野菜は地域イベントで使われています。また、菊池校区では放課後児童クラブとリサイクル活動を組み合わせ、子どもたちがリサイクル活動を通じて「ガラガラ券」を取得し、それを駄菓子と交換する仕組みが導入されていました。

    コミュニティガーデン
    [生ゴミを活用したコミュニティガーデン]

    そして今回。本郷校区と大堰(おおぜき)校区「憩いの園大堰交流センター」を再訪し、新たな展開を確認しました。「MEGURU STATION」は、互助共助を高めることを目的としてスタートしていますが、地域の公民館機能とリサイクル活動が結びつくことで、拠点としての役割がさらに広がり、世代を超えた住民の交流が生まれているという印象を受けました。

    大堰校区では、資源持ち込みで貯めたポイントを麻素材のバッグやペットボトルキャップ製植木鉢と交換する仕組みがあります。

    ポイントで交換できるもの一覧表
    [資源持ち込みでポイントが貯まる]

    アルミ缶販売収益で設置された無料コーヒーコーナーは、センターの利用者の交流に一役買っています。さらに、隣接する小学校では、ごみの授業で子どもたちと先生、役場職員がセンターを訪問し、学校・役場・センター間の連携も深まっているとのことでした。センター内のアンビシャス広場*1では、放課後活動の一環として ecoくらぶがリサイクル活動に取り組んでいます。

    ごみの捨て方について、小学生の書いたポスター
    [放課後活動のecoクラブも活躍]

    大刀洗の取り組みから私たちが学べることは、リサイクルが単なる「資源の循環」にとどまらず、人と人をつなげ、地域を豊かにする可能性を秘めているということです。リサイクル活動を見直し、地域で何ができるか考えてみるきっかけになれば幸いです。

     

    *1アンビシャス広場:福岡県が推進する青少年アンビシャス運動の一環として設けられる放課後の子どもたちの地域での居場所

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    2024/12/18
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    一括回収プラスチックの組成調査

    プラスチックと一言にいっても、種類はさまざまです。ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレンなど、それぞれ用途や特性が異なります。モノからモノへのリサイクル(マテリアルリサイクル)を行うには、プラスチックの種類ごとに分別する必要があります。​

    今回は、研究活動の一環として参加している、廃プラスチックの組成調査(※1)の報告です。​

    今回の組成調査の対象は、 ある自治体にて【一括回収】で集められたプラスチックです。これまで多くの自治体では廃プラスチックの中でも容器包装に当たるもののみを回収していました。しかし、プラスチック資源循環促進法(※2)の制定頃から、容器包装プラスチックと製品プラスチックを「一括で」回収する方法を採用する自治体が増えています。これにより、以前より多くの廃プラスチックの回収が可能となっています。容器包装プラスチックと製品プラスチックの違いについては別の機会に紹介するとして、​今回の組成調査で気になったのは次の2点です。​

    ①廃プラスチックの一括回収に、たくさんの「プラスチックでないもの」が混ざっていること。​
    中でも多かったのがカップ麺の容器です。「外装フィルムはプラスチックでできている。軽くて丈夫だし、この容器もプラスチックっぽい」と、【プラスチック】として出されているようですが、実は【紙】が主体であることが多いです(紙が“主要な”素材)。プラスチックは通常、素材選別や形状選別を経てリサイクルされます。このカップ麺の容器のように他の素材が混ざってしまうと、選別に時間がかかったり、効率が悪くなったります。

    ②お菓子の袋などを小さく折りたたみ、結んだ形で出しているものが見られたこと。​

    コンパクトになり、ごみのかさも減るので、あえて結んで出している方もいるでしょう。しかし、この状態では選別の過程ではじかれてしまったり、上手く破砕(ばらばらにする)ができなかったりして、本来リサイクルできるものも、リサイクルルートに乗らない可能性が高くなります。リサイクルに出すときは、広げたまま出すのが望ましいです。​

    小さく結ばれた袋
    小さく結ばれた袋

    他にも、袋の中に他の袋や容器を入れて出すのも、異素材が混ざる要因となるので、避けた方がよいです。また、汚れが付いたままでは、再生されるプラスチックにも汚れが移ってしまい、全体の質を落としてしまうため、きれいに洗ってから出す(あるいはごみとして出す)必要があります。

    ※1:組成調査:家庭や事業所から排出されるごみの種類や割合を調査・分析するもの。ごみの組成を分析することで、ごみの減量やリサイクル推進に役立つ。
    ※2:プラスチック資源循環促進法:2022年施行。プラスチック製品の排出削減や再利用を促進するもの。企業に設計やリサイクル義務を課し、消費者にも分別回収を求め、環境負荷の軽減を目指す。​

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    2024/10/23
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    学会発表報告「プラスチックの回収と再資源化の評価に関する研究」​

    研究結果をまとめたマトリックス図

    図はサーキュラリティマトリックス(Atasuら,2021)を元に
    調査結果(仮)を反映


    第35回廃棄物資源循環学会研究発表会にて、口頭発表を行いました。

    現在のプラスチックリサイクルの課題として、マテリアルリサイクル率*1が低いことと、リサイクル用途(リサイクルされたものがどのように使われるか)が限られていることが挙げられます。​

    この研究では、サーキュラービジネスモデル(CBMs)を用いてこうした課題を解明・解決できないか試みています。CBMsは、サーキュラーエコノミー(CE)*2を実現するためのビジネスモデルで、シェアリングエコノミーや製品をサービスとして提供する考え方(PaaS)など、さまざまな視点からアプローチします。この研究では、特に「サーキュラリティマトリックス(CM)」を使って、廃プラスチック製品の回収と価値抽出の容易さを視覚的に整理しています。​

    具体的には、回収が難しいか容易か、またその価値を取り出しやすいかどうかの2軸で、プラスチック製品を4つのカテゴリーに分類しました。このマトリックスを通じて、どの製品が効果的にリサイクルできるのか、どの製品に課題があるのかを見える化しています。​

    研究結果をまとめたマトリックス図
    サーキュラリティマトリックス(Atasuら,2021)を元に調査結果(仮)を反映​

    さらに、評価項目についても詳しく説明しました。回収の容易さは、回収インフラの整備状況やコスト、消費者の協力度などによって決まります。一方で、価値抽出の容易さは、素材の汚れや種類、処理技術の成熟度に影響されます。このような基準を設けることで、実態に即した評価が可能になります。​

    暫定的な評価結果として、例えば、ストレッチフィルム*3は、単一素材でかつ特定の場所でまとまって排出されるため、回収と価値抽出が比較的容易と評価されています。​

    今後の展開としては、評価の精度を上げるとともに、評価結果に基づき有効なCE戦略を検討していく予定です。​

    *1 マテリアルリサイクル率:廃棄された資源を“物理的に”加工して、新しい製品や材料に再利用する方法​

    *2 サーキュラーエコノミー:有限な資源を無駄にせず最大限に活用し、廃棄物を最小限に抑える持続可能な経済モデル​

    *3 ストレッチフィルム:物流センターで商品をまとめる時などに使われる薄くて柔軟なプラスチック​

    研究発表会開催概要の図

    第35回 廃棄物資源循環学会 研究発表会

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    2024/2/18
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    登壇『グリーンインフラ・ネットワーク・ジャパン2024全国大会』

    登壇イベントのメインビジュアル

    九州大学景観研究室がリードするセッション「南阿蘇村ではじまるサスティナブルな景観形成 ー歴史的石積みとデカスギのお話ー」にて、サーキュラーエコノミーによる地域づくりとして発表し、パネリストの皆様とディスカッションを行いました。南阿蘇村の地域にある石を使った石垣文化や成長しすぎた杉をガードレールに活用する取り組みなど、南阿蘇の自然や文化を生かしたサーキュラーエコノミーのあり方について話題提供を行いました。

    グリーンインフラ・ネットワーク・ジャパン_イベント情報

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    2024/1/31
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    採択「令和5年度脱炭素型循環経済システム構築促進事業(プラスチック等のリサイクルプロセス構築及び省CO2化実証事業)」

    九州大学を中心とした研究者・事業者の皆様とともに、「リサイクル困難素材等の高品質リサイクル実証事業」を開始します。今後2年と少しの期間で、廃棄された容器包装プラスチックと製品プラスチックの高品質なリサイクルの技術開発やそれに付随する回収・選別の仕組み、CO2の削減効果などを検証していきます。

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    2023.10.25
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    読売新聞に掲載『環境に配慮したプラスチックの削減と循環』

    10/25に登壇したイベントの記事が読売新聞に掲載されました。

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    2023.10.25
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    登壇『環境に配慮したプラスチックの削減と循環』

    公益財団法人福岡アジア都市研究所主催、令和5年度第2回ナレッジコミュニティ「『環境に配慮したプラスチックの削減と循環』~持続可能なまちづくりに向けてプラスチックの実態を知る~」に代表の菊澤が登壇しました。

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    2023.10.14-15
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    イベント「Common Point」にて、ごみゼロ隊長を務める

    ラブエフエムとパタゴニアが共催する「環境課題を解く糸口となる共有点づくり」を目的とした新たな取り組み、COMMON POINT(福岡市内で開催)にて、ごみゼロ推進のお手伝いをしました。大学生・社会人のボランティアさんらの協力を得つつ、分別協力のお願い、啓発、計量など学びの多い活動となりました。

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    2023.3
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    講演「廃プラスチックの循環における情報連携の課題とサーキュラー・エコノミー実現への展望」

    廃棄物資源循環学会若手の会・環境技術学会「若手の会」主催の合同セミナー「デジタル技術の環境分野への適用事例と課題」にて講演しました。

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    2023.3
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    講演「廃プラスチックの循環における情報連携の課題とサーキュラー・エコノミー実現への展望」

    廃棄物資源循環学会若手の会・環境技術学会「若手の会」主催の合同セミナー「デジタル技術の環境分野への適用事例と課題」にて講演しました。