clear plastic bottle on green grass

– プラスチック-

プラスチックは20世紀に入り、人類の生活に革命をもたらした素材です。1950年代には、その軽量性や耐水性から、包装材や製品の製造に広く利用されるようになりました。しかし、その利便性と共に、大規模な環境問題を引き起こす要因となってきました

プラスチックの課題
枯渇資源である化石燃料に依存すること
使用後の不適切な処理により、海洋や陸上の生態系に深刻な影響を与えていること
マイクロプラスチックによる環境や人体への影響が懸念されること
製造・加工・廃棄の過程で、温室効果ガスが排出され、気候変動に影響を与えること
使用済み製品が途上国等に渡り新たな問題を引き起こしていること
手軽に使い・廃棄できることで、線形の経済システムを助長すること1

私たちは、次のような視点で、プラスチック問題にアプローチし、社会変革につながる提案・実践を行っています。

– 廃プラスチックを生み出さない生活や事業活動の提案
– ローカルで実施可能で、誰もが参加できる仕組みの構築
– 限られた資源を循環させる、廃プラスチックの有効活用
– これらによって人々のウェルビーイングを向上させる取り組み

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    2025/4/15
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    ごみ焼却施設「佐賀東部クリーンエコランド」の見学​

    20243月竣工のごみ焼却施設「佐賀東部クリーンエコランド」 *1 を見学しました。この施設は、環境保全や施設の耐久性・安全性の向上を基本方針としており、浸水対策や環境教育・啓発にも力を入れています。施設の動線や担当者の説明から、教育的要素に配慮していることを感じました

    施設内の見学動線は広く、わかりやすい動画などによる説明が随所に設けられています。施設の各部門、例えば、ごみ清掃車がごみを投入する入り口や、ごみをためる「ピット」、ごみが焼却される場所(ここはイメージ動画のみで実際に見ることはできません)などが見学できます。

    今回特に関心を持ったのは、ごみの組成による燃えやすさや燃えにくさの違いや、組成の変化がどのように焼却に影響するのか、という点です。

    「ごみは減らさなくても良い、燃やせば灰しか残らないから問題ない」、「特にプラスチックは燃えやすいので、分別せずに焼却してしまえば良い」という意見も見受けられます。これらは焼却を前提とした議論の中で出てくる意見であり、ごみの分別や減量を進める立場からすると、なかなか納得できない部分もあります。

    実際にごみの組成と焼却の関係性について詳しく尋ねたところ、現在のごみの組成(紙類が40%、プラスチックが30%、生ごみが20%、その他が10%)を考えると、基本的にはごみは自燃し続けるそうです。焼却処理施設の設計時には、発電効率やごみ組成の幅、さらには災害ごみの受け入れなどを考慮して高い処理能力が確保されており、例えば、プラスチックのごみがゼロになるような劇的な変化がなければ問題が発生することはないとのことでした。

    しかし、焼却処理施設の寿命と考えられている30年の間に自治体のごみ政策が大きく変わる可能性も考えられます。例えば、生ごみが減ってプラスチックなどカロリーの高いもの(燃えやすいもの)ばかりになると、炉内の温度が高くなりすぎるため、ごみの投入量を減らしたり、一時的に水を散水して温度を下げたり、カロリーの低い(燃えにくい)ごみと一緒に投入したりする必要が出てくるそうです。逆に、プラスチックの分別が進み、生ごみばかりになると、助燃剤の使用が必要となる可能性があり、その場合、燃料の投入費用が増加し、CO2排出量も増えることになります。

    大きな処理能力の施設を建ててしまうと、ごみを常に一定量投入する必要があるため、稼働から20-30年間のごみの量の変動を予測しないといけません。高い処理能力が確保されていると、それに見合った運用が必要であり、ごみ減量の動機が薄れる恐れがあります。

    ​[ごみピット・ごみクレーン(定期的にこちらからあちらへ、あちらからこちらへごみをひとつかみずつ移動させることでカロリー(燃えやすさ)を均一にします)]

    ごみ管理は、国民の基本的な衛生と生活環境維持の基盤となる欠かせない要素です。処理能力が過剰にならないように調整する一方で、ごみの適切な処理が滞ることなく、30年後のごみ組成やCO2排出量を見据えた施設設計を行うことの難しさを体感しました。

    そのほかにも、アップサイクル*2製品の展示等、持続可能な資源循環のあり方についても考えさせられる見学となりました。ごみの処理は単なる焼却ではなく、地域の環境や経済にも関わる重要な課題です。今後も、ごみと向き合い、ごみについて語りつつ、より良い社会の実現に向けて考えてまいります

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    *1佐賀東部クリーンエコランド: 佐賀県東部環境施設組合が運営するごみ焼却施設、鳥栖市・神埼市・吉野ヶ里町・上峰町・みやき町のごみを受け入れる。

    *2アップサイクル:本来は捨てられるはずの製品に新たな価値を与えて再生すること

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    2024/12/18
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    一括回収プラスチックの組成調査

    プラスチックと一言にいっても、種類はさまざまです。ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレンなど、それぞれ用途や特性が異なります。モノからモノへのリサイクル(マテリアルリサイクル)を行うには、プラスチックの種類ごとに分別する必要があります。​

    今回は、研究活動の一環として参加している、廃プラスチックの組成調査(※1)の報告です。​

    今回の組成調査の対象は、 ある自治体にて【一括回収】で集められたプラスチックです。これまで多くの自治体では廃プラスチックの中でも容器包装に当たるもののみを回収していました。しかし、プラスチック資源循環促進法(※2)の制定頃から、容器包装プラスチックと製品プラスチックを「一括で」回収する方法を採用する自治体が増えています。これにより、以前より多くの廃プラスチックの回収が可能となっています。容器包装プラスチックと製品プラスチックの違いについては別の機会に紹介するとして、​今回の組成調査で気になったのは次の2点です。​

    ①廃プラスチックの一括回収に、たくさんの「プラスチックでないもの」が混ざっていること。​
    中でも多かったのがカップ麺の容器です。「外装フィルムはプラスチックでできている。軽くて丈夫だし、この容器もプラスチックっぽい」と、【プラスチック】として出されているようですが、実は【紙】が主体であることが多いです(紙が“主要な”素材)。プラスチックは通常、素材選別や形状選別を経てリサイクルされます。このカップ麺の容器のように他の素材が混ざってしまうと、選別に時間がかかったり、効率が悪くなったります。

    ②お菓子の袋などを小さく折りたたみ、結んだ形で出しているものが見られたこと。​

    コンパクトになり、ごみのかさも減るので、あえて結んで出している方もいるでしょう。しかし、この状態では選別の過程ではじかれてしまったり、上手く破砕(ばらばらにする)ができなかったりして、本来リサイクルできるものも、リサイクルルートに乗らない可能性が高くなります。リサイクルに出すときは、広げたまま出すのが望ましいです。​

    小さく結ばれた袋
    小さく結ばれた袋

    他にも、袋の中に他の袋や容器を入れて出すのも、異素材が混ざる要因となるので、避けた方がよいです。また、汚れが付いたままでは、再生されるプラスチックにも汚れが移ってしまい、全体の質を落としてしまうため、きれいに洗ってから出す(あるいはごみとして出す)必要があります。

    ※1:組成調査:家庭や事業所から排出されるごみの種類や割合を調査・分析するもの。ごみの組成を分析することで、ごみの減量やリサイクル推進に役立つ。
    ※2:プラスチック資源循環促進法:2022年施行。プラスチック製品の排出削減や再利用を促進するもの。企業に設計やリサイクル義務を課し、消費者にも分別回収を求め、環境負荷の軽減を目指す。​

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    2024/10/23
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    学会発表報告「プラスチックの回収と再資源化の評価に関する研究」​

    研究結果をまとめたマトリックス図

    図はサーキュラリティマトリックス(Atasuら,2021)を元に
    調査結果(仮)を反映


    第35回廃棄物資源循環学会研究発表会にて、口頭発表を行いました。

    現在のプラスチックリサイクルの課題として、マテリアルリサイクル率*1が低いことと、リサイクル用途(リサイクルされたものがどのように使われるか)が限られていることが挙げられます。​

    この研究では、サーキュラービジネスモデル(CBMs)を用いてこうした課題を解明・解決できないか試みています。CBMsは、サーキュラーエコノミー(CE)*2を実現するためのビジネスモデルで、シェアリングエコノミーや製品をサービスとして提供する考え方(PaaS)など、さまざまな視点からアプローチします。この研究では、特に「サーキュラリティマトリックス(CM)」を使って、廃プラスチック製品の回収と価値抽出の容易さを視覚的に整理しています。​

    具体的には、回収が難しいか容易か、またその価値を取り出しやすいかどうかの2軸で、プラスチック製品を4つのカテゴリーに分類しました。このマトリックスを通じて、どの製品が効果的にリサイクルできるのか、どの製品に課題があるのかを見える化しています。​

    研究結果をまとめたマトリックス図
    サーキュラリティマトリックス(Atasuら,2021)を元に調査結果(仮)を反映​

    さらに、評価項目についても詳しく説明しました。回収の容易さは、回収インフラの整備状況やコスト、消費者の協力度などによって決まります。一方で、価値抽出の容易さは、素材の汚れや種類、処理技術の成熟度に影響されます。このような基準を設けることで、実態に即した評価が可能になります。​

    暫定的な評価結果として、例えば、ストレッチフィルム*3は、単一素材でかつ特定の場所でまとまって排出されるため、回収と価値抽出が比較的容易と評価されています。​

    今後の展開としては、評価の精度を上げるとともに、評価結果に基づき有効なCE戦略を検討していく予定です。​

    *1 マテリアルリサイクル率:廃棄された資源を“物理的に”加工して、新しい製品や材料に再利用する方法​

    *2 サーキュラーエコノミー:有限な資源を無駄にせず最大限に活用し、廃棄物を最小限に抑える持続可能な経済モデル​

    *3 ストレッチフィルム:物流センターで商品をまとめる時などに使われる薄くて柔軟なプラスチック​

    研究発表会開催概要の図

    第35回 廃棄物資源循環学会 研究発表会

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    2024/9/30
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    ペットボトルキャップのリサイクル最新情報 〜9/10工場視察報告〜

    リサイクルのためせん別中のペットボトルキャップ。新栄化成株式会社にて

    ペットボトルの回収率は94.4%に対して、キャップの回収率は20%にとどまっています。小さなキャップですがポリエチレン(PE)もしくはポリプロピレン(PP)の単一素材でできているためリサイクルしやすく、高品質な再生材になります。しかし、一般的なプラスチックの選別施設では、小さいがゆえに選別の際にはじかれてしまうことも多くあります。

    ペットボトルは回収率94%キャップは回収率20%
    出典│日経SDGsフォーラム特別シンポジウム(9/12開催)進栄化成代表・進藤氏発表
    *キャップはその他プラスチックとして回収されているため、数字が公表されていません。

    今回訪問した進栄化成株式会社は、通常小さすぎて選別が難しいキャップを、サイズ別・色別・樹脂別に選別する技術を開発することで、キャップの再資源化を実現しています。

    こうして選別されたキャップは、ペレットと呼ばれるプラスチック原料に再生され、プラスチック成形加工業者に販売されます。ペレットは、産業資材・土木資材・流通資材・ ボールペン・回収ボックスなどの色々な製品へ再資源化されます。

    こうした技術の進展が、未開拓の資源のリサイクルに必須であると考えられます。

    工場の端に積み上げられたごみ袋の写真
    関東を中心に、全国からボトルキャップが集まってくる工場の様子
    色別に選別されたキャップ粉砕品の写真
    このペレットが新しいプラスチック製品に生まれ変わります
    再生プラスチックで作られた買い物かごの写真
    この買い物かごも再利用されたボトルキャップから作られています
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    2024.3.4
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    登壇『【3/4福岡で開催】プラスチック問題を考える勉強会 企業・団体で取り組む3氏が議論』

    A luten菊澤の登壇イベント情報

    プラスチック問題を解決するためのポイントを考える勉強会が3月4日、「福岡市NPO・ボランティア交流センター あすみん」(福岡市)で開かれます。企業やNPOなどで問題解決に取り組む方々と異なる立場から語り合います。あすみんが主催し、朝日新聞SDGs ACTION!編集部が企画協力します。

    朝日新聞SDGs ACTION!_イベント情報

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    2024/1/31
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    採択「令和5年度脱炭素型循環経済システム構築促進事業(プラスチック等のリサイクルプロセス構築及び省CO2化実証事業)」

    九州大学を中心とした研究者・事業者の皆様とともに、「リサイクル困難素材等の高品質リサイクル実証事業」を開始します。今後2年と少しの期間で、廃棄された容器包装プラスチックと製品プラスチックの高品質なリサイクルの技術開発やそれに付随する回収・選別の仕組み、CO2の削減効果などを検証していきます。

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    2023.10.25
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    読売新聞に掲載『環境に配慮したプラスチックの削減と循環』

    10/25に登壇したイベントの記事が読売新聞に掲載されました。

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    2023.10.25
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    登壇『環境に配慮したプラスチックの削減と循環』

    公益財団法人福岡アジア都市研究所主催、令和5年度第2回ナレッジコミュニティ「『環境に配慮したプラスチックの削減と循環』~持続可能なまちづくりに向けてプラスチックの実態を知る~」に代表の菊澤が登壇しました。

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    2023.9.14
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    出前講義『福翔高校「総合的な探究の時間」』にて講義

    「地域社会」というお題をいただき、プラスチック問題と掛け合わせてお話させていただきました。弊組織側の諸事情により対面での講義が叶わず、オンラインでの講義となりましたが、高校生に何か持ち帰ってもらえるものがあれば良いな…と。

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    2023.9.12
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    研究発表『第34回廃棄物資源循環学会研究発表会』にて発表

    「プラスチックの回収システム構築に向けたバリューチェーンの工程別課題に関する研究」について口頭発表、「商業施設の廃プラスチックの回収方法および再生可能性に関する研究」についてポスター発表を行いました。共同研究者をはじめ、皆様のご協力で良い議論を行うことができました。ありがとうございます。