✴︎

6月7日、佐賀県唐津市・波戸岬にオープンした「PLAPLA(プラプラ)」を、オープン初日に訪問してきました。
今回は、Ocean Circular Architecture(OCA)プロジェクトでご一緒しているイドベタさんにお声がけいただき、福岡から車で現地へ向かいました。貴重な機会をいただき、ありがとうございました。
福岡市内を抜けて西へ向かうにつれ、都市部の景観から農村・漁村が広がる風景へと移り変わっていきます。福岡市中心部から車で約1時間半という距離ですが、都市と自然の距離感を実感できる移動でもありました。
目的地の波戸岬は、玄界灘に向かって大きく突き出した佐賀県を代表する景勝地です。施設はその岬の先端近くに位置しており、緩やかな芝生の斜面の先に、玄界灘と周辺の島々を望むことができます。

施設自体は決して大規模ではありません。しかし、その限られた空間の中に、「海洋プラスチック問題に取り組む世界初のミュージアム&ラボラトリー」として、展示機能、サイエンスコミュニケーションの場としての役割、そして海洋プラスチックの処理・加工技術が一体的に組み込まれていました。
特に興味深かったのは、海洋プラスチックの回収から再資源化までの工程を、実際の設備とともに見学できる構成です。
海岸で回収されたプラスチックを洗浄するスペースが施設の入り口近くに設けられており、その奥には破砕機や真空乾燥機、プレス機など、再資源化に必要な設備が配置されています。
海洋プラスチックは、長期間海中を漂流・漂着する過程で塩分を含み、貝殻や海藻などが付着していることが多いため、こうした異物を除去する前処理が欠かせません。施設には、大型で厚みのある漁業用ブイも処理できる破砕機が導入されており、その後、加工工程に影響を与える水分を除去するための乾燥工程が設けられています。海洋プラスチックでは、塩分や水分の残留が再生材の加工性や品質に大きく影響するため、この洗浄・乾燥工程が重要な役割を果たしています。
フレーク状になった材料を加熱・プレスする装置も、体験教室向けの小型のものから、およそ100×150cmほどの大型機まで設置されていました。
そして、この施設のもう一つの特徴は、サイエンスコミュニケーションを重視した空間設計にあると感じました。
展示されているオブジェやプロダクトは、海洋プラスチック問題を知識として伝えるだけでなく、来訪者が自然に関心を持ち、対話のきっかけとなるよう工夫されています。自然素材で作られていた昔の漁具と、現在主流となっているプラスチック製漁具の比較展示や、海流や風による海洋プラスチックの移動を可視化した球形展示などは、その代表例です。イドベタさん提供の、ブイスピーカーも取り付けられています。
また、ワークショップスペースでは、20人程度が同時に海洋プラスチックを使ったプレス成形を体験できるようになっており、この日は多くの子どもたちが参加していました。
施設に併設されたカフェも印象的でした。地元の農産物を活かしたドリンクや軽食が提供されており、海を眺めながら滞在できる空間となっています。
特に興味深かったのは、店内で使用されている家具です。海洋プラスチックをプレス加工して製作した板材が家具の素材として活用されており、それぞれ異なる色合いや模様を持っています。また、強度が必要な部分にはステンレスを組み合わせるなど、素材特性に応じた構造設計も取り入れられていました。
これまで私たちが関わってきた廃プラスチックの再資源化では、射出成形などによる製品化を前提として、安定した品質の再生材をいかに供給するかが議論の中心となることが少なくありませんでした。そのため、色や材質のばらつき、異物の混入などは、できるだけ除去・均質化すべき対象として扱われます。
一方、PLAPLAで示されていたのは、素材が持つ個々の表情や特性を積極的に価値へ転換するという考え方です。板材として利用し、構造設計で不足する性能を補完する。他素材と組み合わせる。あるいは、混ざり合うことで生まれる色や模様をデザインとして活かす。
「元の製品に戻す」ことだけを目指すのではなく、海洋プラスチックという素材だからこそ成立する新たな用途や価値の創出が試みられていました。廃プラスチックを燃やさず、より高い付加価値を持つ形で循環させる。その可能性を、技術だけでなく、デザイン、体験、サイエンスコミュニケーションを通じて社会に提示している点が、この施設の特徴であると感じました。
今回の訪問を通じて、サイエンスコミュニケーションの設計と、従来とは異なる廃プラスチックの加工技術・用途開発という二つの観点から、多くの示唆を得ることができました。
ちなみに、外には木陰のブランコがあり、通路にはベンチが並び、長居できる雰囲気も素敵でした。


