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2025/5/1『都市政策研究』第26号に掲載|福岡市×中小企業の脱炭素化レポート
[脱炭素の取り組み内容に関するアンケート結果]
脱炭素施策に関する研究報告が、公益財団法人福岡アジア都市研究所の紀要『都市政策研究』第26号(2025年3月発行)に掲載されました。市内中小企業の現場調査に基づき、脱炭素への現状と課題を整理した内容となっています。代表の菊澤は「中小企業の脱炭素の取り組み ― 現状と課題 ―」と題して、脱炭素社会の推進に向けた地域企業の役割と支援策について考察しました。
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掲載論文情報
論文タイトル:中小企業の脱炭素の取り組み ― 現状と課題 ―掲載誌:公益財団法人福岡アジア都市研究所『都市政策研究』第26号
発行日:2025年(令和7年)3月
ーーーーーーーーーーーー【論文要旨】
GX(グリーントランスフォーメーション)は、国の新たな政策の柱として位置づけられ、新産業創出の契機とされています。しかし、福岡市およびその近隣地域の中小企業の多くは、GXが推し進める技術革新や脱炭素が自社に直接関係するものとは認識しておらず、省エネ設備の導入も主に固定費削減の手段として捉えられているのが実情です。
本研究では、中小企業の脱炭素化における現状と課題を明らかにするため、既存のアンケートおよびインタビュー調査に加え、独自に実施した調査を通じて、気候変動による影響の程度、脱炭素以外に抱える経営課題、脱炭素化への意識と実施状況、取り組みの動機、さらに推進を妨げる障壁について多角的に分析しました。これにより、脱炭素化の停滞要因や中小企業特有の意識・行動の特徴を掘り下げ、今後の支援策や施策立案への示唆を得ることを目指しています。福岡市の未来を見据えた「脱炭素への挑戦」に関心のある方は、ぜひご一読ください。
詳細は福岡アジア都市研究所の公式サイトにてご確認いただけます。
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2025/4/30【受賞報告】ウェルビーイング(新たな都市の評価に関する研究Ⅱ)が「都市調査研究グランプリ」奨励賞を受賞
論文「ウェルビーイング(新たな都市の評価に関する研究Ⅱ)」が、公益財団法人 日本都市センター主催の「第15回都市調査研究グランプリ(CR-1グランプリ)」にて、政策応用部門 奨励賞を受賞しました。本研究は、都市における“幸福”のあり方を問い直し、自治体がウェルビーイングを政策にどう組み込むかを体系的に分析したものです。論文は福岡アジア都市研究所( URC)の山田研究主査とともに、一般社団法人A lutenの代表菊澤による共著です。
受賞に際し、日頃よりご支援いただいている皆さまへ感謝を申し上げるとともに、今後の研究・実践に一層邁進してまいります。[授賞式の様子┃日本都市センター CR1グランプリ 奨励賞受賞 | 福岡アジア都市研究所(URC) ]
都市調査研究グランプリとは
全国の都市自治体や職員が主体となって行った優れた調査研究を表彰する制度であり、都市の行財政運営に資する実践的な知見を広く共有することを目的としています。
研究内容と評価ポイント
本研究では、ウェルビーイングという主観的な概念を都市政策へ導入する方法について検討を行いました。具体的には、ロジックモデルに基づき、ウェルビーイングの政策形成を助ける「政策的フレームワーク」を構築し、最終的なゴール(インパクト)の設定から、ゴールの実現に強く影響を及ぼすアウトカムの設定、具体的な施策の立案・実施までの流れを理論的に導出しました。
また、2023年に URCにて実施したアンケート分析において、仕事を中心とする日常の主な活動の充実が人々のウェルビーイングに強く影響を与えていることを明らかにしました。
審査講評では、以下のような点が高く評価されました:
- ウェルビーイングに関する概念整理と先行研究の精緻な検討
- 自治体の基本計画への応用に向けた具体的な視点の提示
- 政策的フレームワークの構築と他自治体への汎用性
都市の多様な課題に対して、“人の幸福”を軸にどう応えていけるか。研究と現場をつなぐかたちで、いただいた成果を自治体や企業など多様なパートナーと共有し、より良い都市づくりに生かしていけるよう、今後も取り組みを続けてまいります。
第15回都市調査研究グランプリ(CR-1グランプリ)表彰式 | 公益財団法人日本都市センター
報告書のダウンロードはこちら:https://urc.or.jp/report/publications/2023sougou-wb/
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ごみ焼却施設「佐賀東部クリーンエコランド」の見学
2024年3月竣工のごみ焼却施設「佐賀東部クリーンエコランド」 *1 を見学しました。この施設は、環境保全や施設の耐久性・安全性の向上を基本方針としており、浸水対策や環境教育・啓発にも力を入れています。施設の動線や担当者の説明から、教育的要素に配慮していることを感じました。
施設内の見学動線は広く、わかりやすい動画などによる説明が随所に設けられています。施設の各部門、例えば、ごみ清掃車がごみを投入する入り口や、ごみをためる「ピット」、ごみが焼却される場所(ここはイメージ動画のみで実際に見ることはできません)などが見学できます。
今回特に関心を持ったのは、ごみの組成による燃えやすさや燃えにくさの違いや、組成の変化がどのように焼却に影響するのか、という点です。
「ごみは減らさなくても良い、燃やせば灰しか残らないから問題ない」、「特にプラスチックは燃えやすいので、分別せずに焼却してしまえば良い」という意見も見受けられます。これらは焼却を前提とした議論の中で出てくる意見であり、ごみの分別や減量を進める立場からすると、なかなか納得できない部分もあります。
実際にごみの組成と焼却の関係性について詳しく尋ねたところ、現在のごみの組成(紙類が40%、プラスチックが30%、生ごみが20%、その他が10%)を考えると、基本的にはごみは自燃し続けるそうです。焼却処理施設の設計時には、発電効率やごみ組成の幅、さらには災害ごみの受け入れなどを考慮して高い処理能力が確保されており、例えば、プラスチックのごみがゼロになるような劇的な変化がなければ問題が発生することはないとのことでした。
しかし、焼却処理施設の寿命と考えられている30年の間に自治体のごみ政策が大きく変わる可能性も考えられます。例えば、生ごみが減ってプラスチックなどカロリーの高いもの(燃えやすいもの)ばかりになると、炉内の温度が高くなりすぎるため、ごみの投入量を減らしたり、一時的に水を散水して温度を下げたり、カロリーの低い(燃えにくい)ごみと一緒に投入したりする必要が出てくるそうです。逆に、プラスチックの分別が進み、生ごみばかりになると、助燃剤の使用が必要となる可能性があり、その場合、燃料の投入費用が増加し、CO2排出量も増えることになります。
大きな処理能力の施設を建ててしまうと、ごみを常に一定量投入する必要があるため、稼働から20-30年間のごみの量の変動を予測しないといけません。高い処理能力が確保されていると、それに見合った運用が必要であり、ごみ減量の動機が薄れる恐れがあります。
[ごみピット・ごみクレーン(定期的にこちらからあちらへ、あちらからこちらへごみをひとつかみずつ移動させることでカロリー(燃えやすさ)を均一にします)]
ごみ管理は、国民の基本的な衛生と生活環境維持の基盤となる欠かせない要素です。処理能力が過剰にならないように調整する一方で、ごみの適切な処理が滞ることなく、30年後のごみ組成やCO2排出量を見据えた施設設計を行うことの難しさを体感しました。
そのほかにも、アップサイクル*2製品の展示等、持続可能な資源循環のあり方についても考えさせられる見学となりました。ごみの処理は単なる焼却ではなく、地域の環境や経済にも関わる重要な課題です。今後も、ごみと向き合い、ごみについて語りつつ、より良い社会の実現に向けて考えてまいります。
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*1佐賀東部クリーンエコランド: 佐賀県東部環境施設組合が運営するごみ焼却施設、鳥栖市・神埼市・吉野ヶ里町・上峰町・みやき町のごみを受け入れる。
*2アップサイクル:本来は捨てられるはずの製品に新たな価値を与えて再生すること
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2025/1/30内閣府向け講演報告「ウェルビーイングの政策への適用プロセス」
内閣府職員に向けた研修にて、ウェルビーイング(WB)*1に関する講演を行いました。内閣府では、長年、国民の価値観や生活意識の変化を捉えるため、「満足度」や「生活の質」に関する調査を実施しており、内閣府経済社会総合研究所においてもWBの研究が行われています。今回の依頼は、「WBの政策への適用プロセス」をテーマに、主観的な評価項目や政策的フレームワーク*2について、詳しく話して欲しいというものでした。
講演内容については別の機会で取り上げるとして、質疑応答では、特に地方でWBの取り組みが盛んな印象を持つとの指摘がありました。特定の都市だけを取り上げても、所得やWBスコア、性別、年代別で多様な傾向が見られ、こうした細かな違いを捉えるには大規模なデータでは難しく、地域ごとの特徴に焦点を当てた分析が重要です。地方自治体は、こうした地域ごとのニーズや価値観を丁寧に捉え、それに応じた政策を実施することで、WBを効果的に向上させることができると考えられます。
講演では、イングルハートの世界価値観調査を用いて、農耕社会のように社会的流動性が低い地域や宗教色の強い国よりも、近代化が進む国の方が幸福度が高いことを報告しました。しかし、それに対し、「農耕社会に見られる共同体の支え合いもウェルビーイング(WB)に影響を与えるのではないか」との指摘がありました。これまで、価値観は宗教的価値から合理的価値へ、さらに個人の自由を重視する民主的価値へと変遷してきましたが、今後も変化が続くと考えられます。その中で、伝統的な価値観や社会的つながりへの回帰が幸福に与える影響が強くなる可能性もあります。近年、欧米で重視されてきた個人主義的なウェルビーイングに対し、アジアなどで注目される「他者とのつながりの中で見出されるウェルビーイング」が関心を集めていることも、こうした変化の一端と捉えられるかもしれません。
さらに、アマルティア・セン*4の潜在能力アプローチの評価方法についても質問がありました。このアプローチは、物質的な豊かさや量的指標にとどまらず、個人がどれだけ自分の可能性を発揮できるかに焦点を当てるものです。予算や人員(インプット)が必ずしも同じ結果(アウトプット)をもたらすわけではなく、インプットを、期待されるアウトプットやアウトカムに転換する「潜在能力」に配慮することが重要となります。こうしたアプローチの評価についてはまだ未開拓な部分が多いのですが、1つの可能性として、これまでの定量的な(数字で表される)評価に加え、定性的(ナラティブと呼ばれる)評価の重要性も増してくると考えています。
最後に、WBは、地域ごとの特色を踏まえた支援が必要であり、地方自治体が地域のニーズに応じた施策を講じ、国はそのサポートを行うという国と地方の役割分担についても意見をいただきました。
今回、WBの実現には地域ごとのニーズに応じた柔軟なアプローチが必要であり、伝統的な価値観や社会的つながりの重要性を再認識しました。また、従来の定型的な政策形成から、センの潜在能力アプローチのような状況に応じた施策の形成プロセスを含めた研究や取り組みが引き続き不可欠であると強く感じています。
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*1ウェルビーイング(WB):「肉体的にも精神的にも、そして社会的にも、すべてが満たされた状態」かつ継続性のある幸福
*2政策的フレームワーク:政策や事業において、目的、成果、活動、リソースを論理的に整理し、因果関係を明確にするために用いられるロジックフレームを元に開発されたウェルビーイングを政策に適用する際のフレームワーク
*3EBPM:エビデンス・ベースト・ポリシー・メイキング。証拠に基づく政策立案。
*4アマルティア・セン:インド出身の経済学者で、福祉経済学や貧困、飢餓、不平等の研究で知られ「潜在能力アプローチ」を提唱した人物。2000年にノーベル経済学賞を受賞。
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2024/9/4✴︎ News&blogお知らせ:コーポレート ロゴが完成しました
A luten は8月、設立1周年を迎えました。新しいロゴは今まで大切にしてきた価値観を軸に、今後の指針となるよう制作しました。
ロゴタイプ
生活者にとって環境問題というのは無視できない存在であるものの、重く大きすぎるがゆえにどこか遠くのできごとのように感じてしまいます。
A lutenは無理のない仕組みづくりで関わる人に気づきを与えたり、共に想像したり、仕組みの一部として何かと何かを繋ぐような事業のあり方を目指したいと考えています。楽しさやユーモアをまじえ、あれ?と発想転換させたり、面白そう!と新しい視点を与えたり。わくわくするにつなげていく仲介者、媒介者として活動したい。
そんな思いを込め、親しみを感じる軽やかなタッチのロゴタイプを採用しました。
ロゴマーク
A luten の新しいトレードマークとしてカリブーを選びました。菊澤の環境活動のターニングポイントとしてカナダの亜北極地域の先住⺠族の研究があります。彼らが最も敬意を示すのがCaribou(カリブー=北米のトナカイ)です。
何千年にもわたって先住民族や動物たちの食料となってきたカリブーですが、狩猟や開発など生息地の悪化によって絶滅危惧種に指定されています。このロゴには持続可能な未来を築くという意味も込められています。
新しいロゴを通してA lutenのスタンスと想いを伝え、環境に関わるさまざまなプロジェクトに貢献していきます。
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2024/04/01✴︎ News&blogお知らせ:代表の菊澤育代が(公財)福岡アジア都市研究所フェローを拝命
弊社代表の菊澤が、(公財)福岡アジア都市研究所にてフェローに任命されました。
福岡アジア都市研究所は、福岡市や市民、産業界、学界などの連携のもと、都市政策を研究、将来の都市戦略を提言する研究機関です。
研究者として外国人と防災、情報技術と資源循環、ウェルビーイングなど自治体が抱える多様な課題に携わってきたことが評価されたのであればうれしく思います。福岡市の政策シンクタンクとして様々な研究を発信する福岡アジア都市研究所に、少しでも貢献できるよう努めてまいります。
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2023.8.18✴︎ News&blog法人化「一般社団法人A luten」設立
資源循環、ウェルビーイング…を通して、引き続き、新たな節目にあるわたしたちの社会のより良い未来に向けて一層励んでまいります。